異所性妊娠(ectopic pregnancy)の病態と診断
ectopic pregnancy の日本語訳として「子宮外妊娠」という言葉は一般の言語としては容認されるが,学術用語としては「異所性妊娠」なる語に変更することが,日本産科婦人科学会での統一見解(2009年12月)とされている.
異所性妊娠は受精卵が子宮腔以外の部位に着床することによって起こり,全妊娠の 1-2%の頻度で発生するとされる.
着床部位により卵管妊娠,頸管妊娠,卵巣妊娠および腹膜妊娠に分類されるが,その約95%は卵管妊娠である.
リスク因子として卵管形成術,骨盤内感染症既往などが挙げられてきたが,近年ではクラミジア感染による卵管の障害が注目されている.
無月経,不正性器出血および下腹痛が三主徴とされ,卵管破裂の場合には腹腔内出血をきたし急性腹症として搬送される例が多かったが,近年の経腟超音波断層法の普及や高感度hCG検出薬の開発により,破裂前の早期に診断される例も増加している.
妊娠反応が陽性で,子宮内に胎嚢像を認めず,子宮外に胎嚢像が認められれば本症を疑うが,初期の正常妊娠,流産との鑑別が必要であり,その際には妊娠週数,血中hCG値,ダグラス窩の圧痛および液体貯留像などが参考になる.
治療方針
手術療法,薬物療法および待機療法などが患者の状況に応じて選択できるようになってきた.
A手術療法
卵管破裂例でショック状態の場合には,開腹後の根治術が選択されるが,患者の状況に応じて腹腔鏡下手術が選択される例が増加している. 挙児希望がない場合には卵管切除などの根治術が基本術式であるが,卵管保存手術も試みられている. 現時点での保存手術の適応条件は,
1.挙児希望例
2.腫瘤径 5cm 未満
3.血中hCG値 10,000IU/L 以下
4.初回卵管妊娠
5.胎児心拍陰性
6.未破裂卵管
とするのが妥当とされている.
1.挙児希望例
2.腫瘤径 5cm 未満
3.血中hCG値 10,000IU/L 以下
4.初回卵管妊娠
5.胎児心拍陰性
6.未破裂卵管
とするのが妥当とされている.
B.薬物療法
メトトレキサート(MTX)が文献的にも数多く報告されているが,わが国では保険適用外使用である. 通常,全身状態が良好で,未破裂卵管,腫瘤径 3-4cm 未満および血中hCG値 3,000IU/L 未満が推奨されている.
C.待機療法
卵管妊娠が自然に吸収されて治癒することを期待する方法である. 全身状態が良好で,未破裂,腫瘤径 3-4cm 未満およびhCG値 1,000IU/L 未満の例に対して選択されるが,hCG値の低い症例が成功率も高い.
患者説明のポイント
異所性妊娠の術前診断は,時に困難な場合もあり,正常妊娠,流産との鑑別などのためには厳密なフォローアップが必要なことを説明しておくとよい.
腹腔鏡下保存手術の場合には,外妊存続症および反復外妊の合併症があること,また術後は定期的にhCG測定が必要なことを説明する必要がある.
MTX療法は,抗癌剤であることと本邦では保険適用でないことを説明し,副作用に注意しておく必要がある.
待機療法が成功しない場合には,手術療法を行うことが必要になることを説明しておく.
腹腔鏡下保存手術の場合には,外妊存続症および反復外妊の合併症があること,また術後は定期的にhCG測定が必要なことを説明する必要がある.
MTX療法は,抗癌剤であることと本邦では保険適用でないことを説明し,副作用に注意しておく必要がある.
待機療法が成功しない場合には,手術療法を行うことが必要になることを説明しておく.