【研究課題名】
腫瘍病理診断における53BP1発現とゲノム不安定性:分子病理マーカーとしての意義
【研究等責任者】
長崎大学原爆後障害医療研究所 腫瘍・診断病理学 教授 中島 正洋
【研究の実施場所】
長崎大学原爆後障害医療研究所 腫瘍・診断病理学
【目的、意義及び科学的合理性の根拠】
腫瘍の悪性度を推定する普遍的な指標は存在しません。多くの腫瘍化過程にはゲノム不 安定性が関与し、生物学的悪性度と相関することが示唆されています。これまでに皮膚癌 や子宮頸癌の進展過程で、DNA 損傷応答分子である 53BP1(p53 binding protein1) 発現が亢進し、生物学的悪性度と関連することを報告しました。本研究では、特に悪性度 の鑑別が困難な腫瘍を対象に、53BP1 発現の生物学的意義を解明し、普遍的な腫瘍組織マ ーカーとしての有用性を立証することを目的としています。
【研究対象者及び選定方針】
2000 年 1 月から 2023 年 12 月の期間に手術あるいは生検によって採取され、当研究 所および長崎医療センター、長崎みなとメディカルセンター、長崎原爆病院、聖フランシ スコ病院、済生会長崎病院、諌早総合病院、佐世保共済病院、佐世保総合医療センター、佐 世保中央病院、長崎労災病院、嬉野医療センター、隈病院、やました甲状腺病院)に保存 している病理組織細胞診標本を用います。研究のための新規サンプリングは行いません。
研究責任者が過去の診断データーべースに登録されている頭頸部腫瘍(口腔、舌、咽頭、 喉頭を含む)、皮膚腫瘍、食道腫瘍、甲状腺腫瘍、乳腺腫瘍、子宮頸部腫瘍、膀胱腫瘍、肝 臓、胃・小腸・大腸、リンパ節および軟部腫瘍の腫瘍と炎症性疾患の代表的なパラフィン 包埋組織を選択し実験に使用します。
【研究の方法】
頭頸部腫瘍(口腔、舌、咽頭、喉頭を含む)、皮膚腫瘍、食道腫瘍、甲状腺腫瘍、乳腺腫瘍、 子宮頸部腫瘍、膀胱腫瘍、肝臓、胃・小腸・大腸、リンパ節および軟部腫瘍の腫瘍と炎症性 疾患の組織切片を対象に、蛍光免疫染色により 53BP1 発現パターンを解析し、組織学的 異型度との相関を明らかにします。各組織における 53BP1 発現の生物学的意義を、 53BP1 と細胞増殖マーカーである Ki-67 や DNA 損傷応答あるいは腫瘍関連分子である p16、p53、RAD51、DNA-PKcs、XRCC4、Ku70/80、Mieap との蛍光二重免疫染 色で解明します。また、53BP1 発現とゲノム不安定性との関連性を array Comparative Genomic Hybridization(aCGH)や FISH 法、PCR 法で解析します。 53BP1 発現解 析に基づく診断基準を設定し、その診断精度を既存の診断マーカーと比較して有用性を明ら かにします。
【研究期 間】
長崎大学大学院医歯薬学総合研究科倫理委員会承認日 ~ 2024 年 3 月 31 日
【インフォームド・コンセントの方法】
本研究は保存病理組織細胞診試料を用いるため、インフォームド・コンセントを受けま せん。インフォームド・コンセントを受けない場合の代替案として、研究内容の概略や得 られた結果について当教室のホームページで広く情報を公開します。試料提供者または代 諾者から研究に対する問い合わせあるいは試料の利用を拒否する申し出があった場合は、 研究責任者が速やかにこれに対応し、試料利用を中止するとともに、該当試料から得られ た研究結果を破棄します。
本研究への参加を拒否されたとしても不利益が生じることはありません。なお、本研究 への参加を拒否されたい場合は、下記までご連絡をお願いいたします。
【倫理的問題点等】
本研究はヘルシンキ宣言及び人を対象とする医学系研究に関する倫理指針に従い実施さ れますが、倫理的問題点として、可能性は低いものの、個人情報漏洩の可能性は否定でき ません。研究対象者が研究に参加することで生じる身体的負担や、健康障害等有害事象が 生じる可能性はありません。
【予測される研究対象者又はその家族に対する危険性及び利益】
保存病理組織細胞診試料を用いるため、研究対象者が本計画に伴い新たに生じる身体的 負担や、健康障害等有害事象が生じる可能性はありません。可能性は限りなく低いものの、 情報が漏洩し、病気の情報が特定される可能性を完全には否定できません。病気が他人に 知られる苦痛などの可能性も否定できません。本研究に試料が使われることにより、病理 細胞診断における普遍的分子マーカーの開発と病理細胞診断学的な研究推進への貢献が期 待できます。
【研究対象者に対する健康被害の補償】
本研究によって研究対象者の新たに生じる身体的侵襲はありません。
【個人情報等の保護の方法】
情報管理者が研究対象者の年齢、性別、病理診断、病期といった研究に必要な情報のみ を試料とともに新規匿名化番号を付し、その他、氏名、居住地、生年月日といった個人情報 はすべて破棄します。最終的に個人情報管理者は連結不可能匿名化した情報のみを保有し ます。データの保管についてもキャビネットの施錠を行い情報漏洩については十分配慮し ます。
成果発表は、個人が特定できない形で実施されます。
【研究等の期間及び当該期間終了後の試料・情報の保存及び廃棄の方法】
研究期間中の試料とデータは施錠できるキャビネットで保管します。研究期間終了日から 5年間又は研究の結果の最終の公表日から3年を経過した日のいずれか遅い方の日まで上 記と同様に保管した後、試料については医療用廃棄物として破棄し、データについては裁断 処分します。
【知的財産権の帰属について】
本研究から成果が得られ、特許権などの知的財産を生み出す可能性がありますが、そ の場合の知的財産権は長崎大学に帰属し、患者さんには帰属しません。
【研究に関する連絡先】
本研究について、何か聞きたいことや分からないこと、心配なことがありましたら、遠慮 なく担当研究者へご連絡ください.
《研究担当者》
氏名:松田 勝也(助教)
所属:長崎大学原爆後障害医療研究所 腫瘍・診断病理学
電話:095-819-7107
E-mail: genkenbyori@ml.nagasaki-u.ac.jp